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壊れやすいところを作って、システムを守る
この壮大なエネルギー構想の入り口は、「落雷という制御不能な自然現象を、いかにして
我々の手中に収めるか」という一点に集約される。気象学的に落雷が発生しやすいエリアをマッピングすることは可能だが、ミリ秒単位で「今、この瞬間に、この一点へ雷を落とせ」と天に指令を出すことは、現代科学の頂点をもってしても不可能だ。
絶縁体である大気に導体の道をつくる
そこで必要となるのが、地上から空へ向けて電離したプラズマの道を作る
「レーザー誘雷技術」である。高出力のレーザーを雲底に向けて照射し、大気の絶縁破壊を人為的に引き起こすことで、雷を狙った地点へと誘導する。理論上は明快だが、ここに最大の「設計の壁」が立ちはだかる。
「落雷の衝撃波でレーザー発振器や反射鏡が瞬時に破壊されるのではないか?」
この懸念に対し、多くの技術者は「完璧な保護」を追い求める。巨大な防護壁、耐衝撃性の衝撃吸収ダンパー、防塵防滴の堅牢な格納庫。しかし、そうして構築された要塞のような
システムは、かえってシステムを肥大化させ、建設コストとメンテナンスコストを天文学的な数値へと引き上げる。なにより、自然の猛威を前にして、「壊れないこと」を前提とする
設計には、いつか必ず来る「想定外の破壊」に対して脆弱であるという宿命的な弱点が
ある。
壊れることを前提として、レイアウトする
私はここで、あえて「逆」の発想をとる。「光学系や誘雷タワーそのものを、消耗品と割り切る」のだ。
レーザー光を誘導する最終段の光学ユニットを、落雷の熱と物理的な衝撃で破壊されることを前提とした「カートリッジ方式」で設計する。ユニットが一つ破壊されても、予備の
ユニットが自動的にせり出し、瞬時に誘雷を再開する。あるいは、レーザー光路を物理的に曲げる(反射鏡)ことで、エネルギーの逃げ道を作り、落雷の直撃を直接光学系へ与えない空間設計を施す。
安価で交換しやすいようにつくる
これは、「壊れないこと」を目的にするのではなく、「壊れても機能を維持する」ことを
目的とする設計思想である。完璧な光学系を追求してシステム全体を停止させるよりも、
多少の損耗を運用コストとして算入し、常に稼働させ続けること。この「荒っぽい割り切り」こそが、自然のエネルギーを人間の文明へと接続するための最初の一歩となる。
完璧主義もいいでしょう。しかし、別のアイデアもある
多くの日本の現場では、単一の失敗も許されない空気が漂う。しかし、雷という自然界の
怒りを正面から受け止めるインフラを構築するにあたって、完璧主義はかえってシステムを
殺す。「壊れながらも、全体として機能し続ける」という、いわば生命の免疫系のような
アーキテクチャこそが必要なのだ。
この第一章で私が語りたかったのは、単なるレーザーの技術論ではない。「システムが損傷することを許容した時、初めて我々は自然という強大な相手と対等な土俵に立てる」という事実である。
まずは作ってみる、という考えが日本に足りない
もちろん、光学系を消耗品として扱うには、材料工学的なブレークスルーや、自動交換機構の精密な制御が必要だ。しかし、それらは物理法則の範囲内に収まる。完璧を目指して幻想に縛られるよりも、損耗を設計の一部として受け入れる方が、よほど現実的かつ創造的ではないか。
次回のブログへ
さて、光学系という最前線で強引に雷を捕まえたとしても、その荒ぶるエネルギーをそのまま核融合炉の心臓部へ流せば、炉は一瞬で電子部品ごと跡形もなく吹き飛ぶだろう。次は、雷の「電流」という荒ぶる魂を物理的に遮断し、純粋な「磁束の変化」だけを摘み取る方法について話を進めよう。








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